NEW:2017/3/28

クラッシャー上司

 仕事はできるものの、部下を言葉の暴力で精神的に追いつめてつぶし、出世していく上司像を指す。筑波大学医学医療系産業精神医学・宇宙医学グループの松崎一葉教授が命名し、自著「クラッシャー上司 追い詰める人たち」(php新書)で、「部下を精神的につぶしながら、どんどん出世していく上司」と定義し、その人物像を紹介し、警鐘を鳴らした。

 人格を否定したり容姿をやゆしたり、「バカ!」などと暴言を吐いたりする単なる「パワハラ上司」なら、部下が体調を崩して休職したりすることによって問題が表面化し、懲戒的な人事によって問題が解決されるのが一般的だが、松崎教授は「基本的に能力があって仕事ができる。部下は心を病んで倒れていくが、業績はトップクラスなので、会社は問題に気付いても処分できない。結果として、どんどん出世してしまう」と、その危険性を指摘する。

 松崎教授の命名以来、「そんな上司、うちの会社にもいる」などと共感を呼んで話題になり、社会的認知度が高まった。中間管理職教育で「問題のある上司」のモデルとして取り上げる企業も出てきた。(Ando,2017/3)





新着5キーワード

再生細胞薬

 梗塞や出血、挫傷などで壊死した脳細胞を再生させようとする医薬品。「失われた脳細胞は再生できない」という常識を根本から覆す再生医療として注目されている。再生医療といえばヒト体細胞から作製するiPS細胞が有名だが、この再生細胞薬は、骨髄由来の幹細胞から作製した細胞を「薬」として使う。2017年4月、NHKテレビの「クローズアップ現代」で「脳がよみがえる」のタイトルで紹介されて反響を呼んだ。1990年代後半から注目され、東ヨーロッパのアルメニア共和国で脳梗塞患者の半身麻痺の機能回復効果が確認され、米国では、スタンフォード大学で、日本の医療ベンチャー「サンバイオ社」による治験が順調に進み、最新医療として認知された。日本では、札幌医科大学で、経静脈投与による治験が行われ、「脳梗塞に伴う神経症候に治療効果がある」との基礎研究結果が多数報告されている。医薬品としての展開は、日本人が米国で起業した医療ベンチャー「サンバイオ社」が2015年に本社を日本に移し、安価で大量生産が可能な「他家移植」による量産体制を整えて普及を目指しており、治験を経た上で「数年のうちに臨床現場での実用化」を目指している。このほか、大日本住友製薬なども治験を重ねて実用化に向けた研究を着々と進めている。(Ando,2017/5)

ネット炎上保険

 企業が「ネット炎上」に備える保険。国内では、損害保険ジャパン日本興亜が2017年3月に発売した。企業が一般加入できるネット炎上対応の商品は国内初で、飲食店店員の不衛生な行為がネットで騒動になったケースなど、従業員の不適切な行為がネット上で問題にされるケースが近年目立つことから、その対策費用を補償する保険が必要との企業側の需要を見込んだとみられる。同社の2017年3月10日発表のニュースリリースでは、保険対象となるケースを、「ネット炎上が起きた後、炎上の拡散防止と原因を究明するためにコンサルティング会社に対策を依頼するのに必要な費用」としている。また、「炎上が起きた場合に報道機関に対してどんなリリースを出すかなどメディア対応費用も含む」としている。

 「掲載している医療情報に医学的に根拠のない誤った内容が多い」などの指摘が殺到し、2016年に閉鎖されたディー・エヌ・エー(DeNA)の医療情報サイトのような「キュレーションサイト」も対象としている。サイトに掲載した記事が炎上して批判が殺到した場合なども保険対象としている。
 その一方、世間に注目させる目的で意図的に炎上を引き起こす「炎上マーケティング」は対象にしていない。(Ando,2017/3)

嫌われる勇気

 フロイト、ユングと並ぶ「心理学の3巨頭」の1人とされるオーストリア出身の心理学者アルフレッド・アドラー(1870~1937年)の「アドラー心理学」の中核をなす自己啓発のための概念。「すべての悩みは対人関係の悩みである」とした上で、人は過去の原因によって突き動かされるのではなく、今目的に沿って生きている。人生とはいつでも選択可能なものであり、過去につらいことがあったとしても、これからどう生きるかには関係がない」として、他人が自分をどう見ているかを意識せず前向きに生きることが大切だと提唱する。アドラー心理学はこのことから「勇気の心理学」と称されることもある。

 日本ではあまり知られていなかったが、哲学者で心理学者の岸見一郎氏がライターの古賀史健氏との共著でアドラー心理学を分かりやすく紹介した「嫌われる勇気 自己啓発の源流『アドラー』の教え」(ダイヤモンド社)がベストセラーとなり、それをべースにしたテレビドラマ「嫌われる勇気」が2017年1月から3月まで放映された。このドラマでは、同僚や上司からの評判や指示は気にせず事件を解決していく、組織になじまない一匹狼タイプで「嫌われる勇気」を持った女性刑事を主人公にした。

 この女性刑事のキャラクター設定に対し、日本アドラー心理学会が「アドラー心理学における一般的な理解とはかなり異なっている」と指摘し、テレビ局に放送中止もしくは台本の書き換えを求めて要望書を出す一幕もあったが、ドラマは予定通り最終回まで放映された。(Ando,2017/3)

ニセ電話詐欺

 身元を偽り他人になりすまして電話をかけ、息子など家族になりすまして身内の人間だと信じ込ませて金銭をだまし取る詐欺の手口。息子になりすまして「オレだけど」などと話しかけることが多く、警察庁が「特殊詐欺」として分類する詐欺の手口の1つで、わが子を思う親心につけこむのが特徴。高齢者が狙われることが多く、年間の被害総額が数百億円にも上ることから深刻な社会問題となっている。
 息子になりすまして「オレだけど」と話しかけることから、当初は「オレオレ詐欺」と呼ばれたが、娘を名乗って「私だけど」と話しかけて指定した金融機関の口座に現金を振り込ませる手口が増えて実態に合わなくなったため、「振り込め詐欺」という呼称が一般化した。
 被害防止啓発のため、警視庁が2013年に詐欺名称を公募した際には「母さん助けて詐欺」が最優秀賞に選ばれたが、新聞などマスメディアが使用しなかったこともあり定着しなかった。
 茨城県警は2017年7月に名称を「ニセ電話詐欺」に統一した。金をだまし取る口実は、「会社の金に手を付けてしまった。今すぐ現金で穴埋めしないと逮捕される」「異性との交際でトラブルになった、金で解決しないと生命が危険」などと、自らに非にがあるように装って親の不安をあおった上で、「会社の上司」「警察官」「弁護士」「暴力団組員」などを名乗る人物までが電話に出てくるなど、組織犯罪化し、巧妙化している。

 警察庁2017年2月発表の警察白書では、2016年の年間被害総額は406億3千万円で、前年より75億7千万円減って2年連続の減少となったが、把握した被害件数は8年連続の増加だった。手口別では、医療費などの還付を受けられると偽って現金自動預払機(ATM)に誘導して電話による指示に従って振り込み操作をさせる「還付金詐欺」が急増。架空の投資話を持ちかけたり、「保険の還付金が入る」などと持ちかけるニセ還付金や「金儲けになる」といったニセ投資話詐欺が増えた。
 警察庁や全国各地の警察署では警戒を呼び掛けているが、被害に遭わないためには、次のようなポイントを押さえておきたい。
(1)名乗られた本人に電話をして直接、事実確認をする
(2)家族の間で電話で通話する際の合言葉を決めておく
(3)簡単にお金が得られる”うまい話”には乗らない
(4)「携帯電話をなくした」「風邪をひいて声がおかしい」といった言い訳は本人ではないことを覚られないための”予防線”の可能性が高いので疑ってかかる
 このほか、不審な電話があった時には、だまされたふりをして電話を切った後、警察に通報し、「受け子」と呼ばれる詐欺犯が自宅などに現金を受け取りに来た際に取り押さえる「だまされたふり作戦」が成果を挙げている。(Ando,2017/3)

内心の処罰

 犯罪計画を心の中で考えたり、他人と話し合っただけで処罰対象となること。わが国の刑法は犯罪を実行(既遂)か、結果は生じていないものの、犯罪に着手(未遂)した場合に処罰することを原則としている。これに対して、政府が創設を検討している「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「組織犯罪処罰法改正案」では、捜査機関の裁量で解釈が拡大され、内心の処罰も可能になり得るとして、日本弁護士連合会(日弁連)は、共謀罪が成立した場合、現在の刑法体系の原則である犯罪行為の結果が発生した「既遂」の処罰よりもはるか前段階に、刑罰権が発動することになるとして問題視している。過去に共謀罪が国会審議された際には「内心の処罰」は表現の自由を脅かすなどの批判が強く、廃案になる要因になった。(Ando,2017/3)

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 「時事用語のABC」は、2000年8月に松山大学・檀研究室の社会活動としてスタート。「まぐまぐ」のメールマガジンで配信したところ、わかりやすく丁寧な最新時事用語の解説が好評をいただき、約3万人の読者を数えるまでになりました。
 2012年から辞書サイト「JLogos」を運営する株式会社エアが事業を継承。匿名のブログや「まとめサイト」と異なり、各方面の専門家やプロのライターによるライティングで、速報性とクオリティーを両立しながら、ニュースで話題のキーワードの意味や背景などを発信していきます。

【編集委員】
・小島孝治(株式会社エア代表取締役社長)
・南俊基(公認会計士、税理士、日本証券アナリスト協会検定会員):監査法人トーマツ、JASDAQ上場企業のバイオベンチャー創業期からの役員経験、財務省理財局にて財政投融資の調査業務に従事し、現在も財務省顧問として参画。南公認会計士事務所の所長として、メーカー、小売業、システム会社、医療機関、バイオベンチャー等に対して、営業戦略、イノベーション戦略、財務戦略、コスト管理、事業再編に関するコンサルティングを提供している。併せて、企業向けに、会計、財務等の研修を数多く行っている。

※そのほか新聞記者経験者をはじめ、様々な専門家からの寄稿によって成り立っております。

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