NEW:2017/02/23

フィルターバブル

 情報が「フィルター(filter)」を通して提供され、その理解が自分自身の文化的・思想的な皮膜(bubble)の中に閉じこもる状況を表した言葉で、2011年にインターネット事業家イーライ・パリザーによって同名の著書として公開された。

 インターネット検索で得られる情報が、フィルターとしてユーザの嗜好や検索履歴に合わせてカスタマイズ表示され、得られる情報自体に偏りが生じてしまうことや、それがユーザによる「確証バイアス」によって、さらに加速される状況を表す。
 「確証バイアス」とは心理学用語でいう認知バイアスの一種で、仮説や信念の検証時、自分が支持する情報ばかりを集め、反証される情報を無視してしまう傾向のこと。

 イーライ・パリザー(Eli pariser)はインターネット事業家で、2011年の著書出版の翌年に「Upworthy(アップワーシー)」というインターネットメディアの共同創業者の1人。オンラインニュースサイトとして、同姓婚や世界の貧困問題などリベラルで社会意義のある情報の提供をミッションに掲げ、ソーシャルメディア上でシェアさせる事に重点を置いて展開し、14ヵ月で3000万UUという爆発的なスピードで成長した。日本でも広まっているキュレーションメディアやバイラルメディアの元祖でもある。

 著書は2011年に米国で出版された後、翌年日本語訳版として邦題「閉じこもるインターネット」として発売され、そして2016年に文庫化される際に元の言葉「フィルターバブル」に変更されている。パリザーは同著の中で、好みに合わせたカスタマイズは「フィルターに囲まれた世界」をつくり、視野を広める情報に触れる機会を失い、結果的に自分のためにもならず、民主主義にも悪影響を及ぼすことになる、と警鐘を鳴らしている。(2017/2,KK)





新着5キーワード

舌下免疫療法

 花粉症などアレルギー疾患の免疫療法の1つ。症状が出た時に症状を抑える対症療法と異なり、アレルギーの原因物質であるアレルゲンを少しずつ体内に取り入れて体質を改善して免疫を作ることによって根本治療を目指す最新の治療法。薬剤投与は注射ではなく、微量のアレルゲンが入ったエキス薬剤を舌の下に垂らして口の中にふくんだ後に飲み込んで体内に取り入れる(エキス薬剤が液体の場合、パンに染み込ませるなどして舌の下に含んだ後に飲み込む方法もある)。このため「舌下」と呼ばれる。世界保健機関(WHO)の見解書に「アレルギー疾患を根治できる可能性のある治療法」と記述されたこともあって注目されている。

 スギ花粉の場合、国内では鳥居薬品の「シダトレン」が、12歳以上の患者に限定して保険適応になっている。注射ではなく自分で服用できるので頻繁に通院する必要がないのも大きなメリットと言える。しかし継続が重要で、服用を一旦中止してしまうと最初からやり直しになるため、定期的に確実に通院しなければならない。服用は毎日1回、エキス剤を舌下に垂らし、2~3年(またはそれ以上)かけて徐々に体を慣らしていく。

 受診の注意点としては、スギ花粉をアレルゲンとする花粉症を対象疾患としているため、血液検査によるスギ花粉の抗体が陽性だというデータが必要。事前にアレルギー検査を受けておくか、初診時には血液検査から開始する必要がある。血液検査は結果が出るまで通常数日から1週間程かかる。

 治療開始の注意点としては、花粉が飛散している時期はアレルゲンに対する体の反応が過敏になっているため、スギ花粉が飛散している時期を避けて治療を開始すること。投薬開始時にはアナフィラキシーショックの可能性もあり得るため初回は特に慎重に様子をみる必要があること。また併用薬の制限があることなどがあげられる。例えば免疫に影響があるステロイド系の薬との併用や、ダニをアレルゲンとするアレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法を同時に行うことはできない(このアレルギー性鼻炎はヤケヒョウヒダニとコナヒョウヒダニをアレルゲンとするもので、海外からの輸入錠剤が使われる)。

効果を感じられる確率は高く、完治を含む7~8割の患者で何らかの効果が実感されているという報告もあるが、全く効果が無い場合もあるので過度な期待は禁物だ。

キイトルーダ

 免疫の働きを利用する新型がん治療薬。一般名は「ペムブロリズマブ」。厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)が2017年2月に保険適用を承認した。免疫の働きを利用するがん治療薬の保険適応の承認は、類似作用のある「オプジーボ(小野薬品工業)」に次いで国内2例目。キイトルーダは米国の製薬大手メルクが開発し、国内では2016年9月、日本法人MSDからの製造販売が承認された。

 一部の皮膚がん(悪性黒色腫)と肺がんに対し保険が使える。薬価は100ミリグラム1瓶が約41万円で、1日薬価に換算するとおよそ4万円弱。仮に1年間使い続けたとすると年1427万円になる計算。オプジーボと同じ効果が期待されることから、1日当たりの薬価が同水準になるように設定された。中医協は適正使用を促す指針案も議論して、オプジーボが他の抗がん剤が効かなかった患者を対象にするのに対し、他の抗がん剤治療を経験していない患者にも使用可能とした。ただし、事前に効果がある可能性を診断薬で確認するという条件を付けた。(安藤,2017/2)

忘れられる権利

 インターネット上に残る、自己に不都合な個人情報を検索できないよう求める権利。「拡大」や「炎上」によって侵害されたプライバシー救済のため、ヤフーやグーグルなどの検索エンジンから、ネット上の個人情報を削除してもらうよう検索事業者に要請できるとする権利。

 2009年にフランスで初めて使われた概念で、欧州連合((EU)の最高裁判所に当たる欧州司法裁判所がこの権利を認めたことから、ヨーロッパ発祥の概念とされる。

 これに対して米国では「真実をネット上に公表することにストップをかけるのは表現の自由に反する」との主張が強く、「忘れられる権利」の是非については見解が別れている。

 日本では、グーグルに対し、自分の逮捕歴に関する報道内容が表示されないよう記事の削除を男性が求めた裁判で、最高裁は2017年1月31日付の決定で、検索結果を表示する表現の自由と比べて「プライバシーの保護が明らかに優越する場合に限って削除できる」として、削除には厳格な条件を満たす必要があるとする判断基準を初めて示した。

 最高裁はこの決定の中で、検索結果で表示される情報の収集や整理は自動的に行われるが、そのプログラムは検索事業者の方針で作られるため、「表現行為の側面がある」として事業者に表現の自由の利益を認めたが、2014年にEUが認めた「忘れられる権利」には触れなかった。

 個人のプライバシーを含む記事などの検索結果を削除できるかどうかの基準については
(1)事実の性質や内容
(2)事実が伝達される範囲と具体的被害の程度
(3)その人の社会的地位や影響力
(4)記事の目的や意義

などとして、事実を公表されないことによるプライバシー保護の利益が「事業者の表現の自由を明らかに上回る場合には、削除できる」との判断を示した。(Ando,2017/1)

偽ニュースサイト

 事実に基づかない偽りの情報をニュースとして配信する記事を掲載するサイトのこと。フェイクニュースサイトとも。特に意図的に「偽」を捏造し、それを「事実と誤認」させる記事・サイトを指す。広義には出典元の事実確認をせず、デマを拡散させるメディアも含まれる。
 現実を皮肉った「ジョーク記事」を掲載する「虚構新聞」などは、ジョークサイトとされるが、一見偽記事と気づかない場合も多く、実際問題としては区別がつかなくなってきている。

 偽ニュース記事は、広告収入につながるアクセス数(PV:ページビュー)を稼ぐためにセンセーショナルな内容が掲載される場合が多く、SNSなどで拡散されやすい特徴もある。たとえば差別的な記事で民族対立をあおり、意見を言いたくなるような内容に仕立て上げ、人の感情にうったえかけるものなどだ。またサイトで配信する全ての記事を偽ニュースとせず、正しい記事も多く配信することで、一見するだけでは「偽」と分からない細工をするなど巧妙になってきている。

 2016年の米国大統領選では「ローマ法王がトランプ氏を支持」などの偽ニュースが流され、選挙結果に影響を与えたとの分析もある。
 また同年パキスタンでは、国防大臣が偽ニュース記事「パキスタンがシリアに軍隊を派遣した場合、イスラエルがパキスタンに核攻撃する可能性がある」を真に受け、イスラエルに対して報復措置をとる準備をするというツイートをする事態があった。イスラエル国防省がすぐにツイッターでフェイク記事のことを指摘し事なきを得たが、一歩間違えれば国際紛争に発展することもある重大な問題となっている。

 日本でも2017年に「2000年にソウル観光に訪れた日本人の11歳と9歳の姉妹が強姦される事件が起き、ソウル市裁判所が犯人とされる韓国人の男に一審を覆す無罪判決を出した」とのかなり具体的な内容の偽ニュース記事が「大韓民国民間報道(日本語のサイト)」というサイトに掲載された。このサイトを立ち上げた日本(東海地方)在住の男性は中日新聞(関東では東京新聞)記者の電話取材に応じ「失業中の小遣い稼ぎ。広告収入が得られればと思って」と動機を述べ、2017年1月28日付朝刊で報じた。

 偽ニュースを検証するための事実確認(ファクトチェック)は、まずその記事内容の出元を確認する必要があるが、特定しづらい場合も多く難易度が高い。客観的事実の検証や、対象への取材など、時間と手間をかける必要があるが、偽記事と断定するのは難しい場合も多い。

 SNS最大手のFacebook社は、ファクトチェック機関と連携し、信頼性が低いとされる記事をシェアする際に警告画面を出す新機能を発表しているが、発言権の侵害になる可能性もあり賛否が分かれている。

 偽ニュース記事を拡散させない方法は、自分自身が意識を高め、真偽の程が疑わしいものや、出典が明確でない記事は安易にシェアしない等のリテラシーを高めていくしかない。(2017/01)

大統領令

 大統領令(Executive Order:OE)は、米国大統領が議会の承認を得ることなく発令する行政命令で、大統領署名だけで法律と同じ効力を持つ。ただし権限の範囲は憲法で明確に規定されていない。また連邦最高裁判所が違憲としたり、連邦議会が反対する法律をつくることもある。

 議会の承認を必要としないので迅速な行政運営が可能になるメリットがある反面、大統領の独裁を許しかねないというリスクもある。
 2017年1月に就任したトランプ米大統領は、選挙戦中に公約としてツイッターで主張していたTPPからの永久離脱、メキシコとの国境への壁建設、オバマ前大統領が推進した医療保険制度「オバマケア」の廃止、中東からの入国を制限することを指示する大統領令などに矢継ぎ早に署名している。
 メキシコ国境の壁建設では、建設費をメキシコに負担させると主張するなど強硬な姿勢を打ち出していることから、メキシコが強く反発し、ペニャニエト大統領との首脳会談がキャンセルされ、メキシコとの国際紛争に発展する懸念が指摘されている。

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 「時事用語のABC」は、2000年8月に松山大学・檀研究室の社会活動としてスタート。「まぐまぐ」のメールマガジンで配信したところ、わかりやすく丁寧な最新時事用語の解説が好評をいただき、約3万人の読者を数えるまでになりました。
 2012年から辞書サイト「JLogos」を運営する株式会社エアが事業を継承。匿名のブログや「まとめサイト」と異なり、各方面の専門家やプロのライターによるライティングで、速報性とクオリティーを両立しながら、ニュースで話題のキーワードの意味や背景などを発信していきます。

【編集委員】
・小島孝治(株式会社エア代表取締役社長)
・南俊基(公認会計士、税理士、日本証券アナリスト協会検定会員):監査法人トーマツ、JASDAQ上場企業のバイオベンチャー創業期からの役員経験、財務省理財局にて財政投融資の調査業務に従事し、現在も財務省顧問として参画。南公認会計士事務所の所長として、メーカー、小売業、システム会社、医療機関、バイオベンチャー等に対して、営業戦略、イノベーション戦略、財務戦略、コスト管理、事業再編に関するコンサルティングを提供している。併せて、企業向けに、会計、財務等の研修を数多く行っている。

※そのほか新聞記者経験者をはじめ、様々な専門家からの寄稿によって成り立っております。

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